2025年7月1日施行!新VAT法改正で何が変わる?

2025年7月1日、ベトナムのVAT(付加価値税)制度に大きな変革が訪れます!新付加価値税法(法令48/2024/QH15)の施行により、課税対象、非課税対象、納税者、さらには計算方法や控除、還付といった細部に至るまで、広範な改正が行われます。
これまでの慣習が大きく変わる可能性があり、事業運営への影響は避けられないでしょう。具体的に何がどう変わり、それらが皆さんのビジネスにどのような影響をもたらすのかを正確に理解しておくことは、今後の適切な対応のために不可欠です。
この度、AGS社が2024年に改正された付加価値税法の主要な変更点を徹底解説いたします。どうぞご期待ください。

付加価値税

1. 非課税(Non-taxable)対象の抜本的な見直しと削減

新VAT法の最大の特徴の一つは、従来の「非課税対象」を大幅に削減し、課税ベースを拡大した点です。これにより、サプライチェーンにおける「税額控除の分断(Gãy chuỗi khấu trừ)」を防ぐ狙いがあります。

1.1. 肥料、農業用専門機械・設備、遠洋漁船の課税化

従来の法律(法律番号:71/2014/QH13)では、農家を保護するという目的から、肥料や農業用機械は「非課税」とされていました。しかし、非課税であるために、これらを製造・販売する企業は、自社が購入した原材料や電気代、固定資産に対する仕入VAT(通常10%)の控除や還付を受けることができず、これらが「隠れたコスト」として製造原価に累積していました。

2025年7月1日以降: これらの品目は非課税枠から除外され、後述の通り「5%の軽減税率」へ移行します。これにより、企業は仕入VATの全額控除・還付が可能となり、製造コストの透明化と効率化が期待されます。

1.2. 証券保管サービスおよび取引所市場組織サービス

金融市場の透明性を高めるため、ベトナム証券保管振替機構(VSDC)や各証券取引所(HOSE、HNX)が提供する一部の市場組織・保管サービスについて、従来の免税措置が撤回され、原則として課税対象となります。

1.3. 未加工の輸出鉱物資源・天然資源

ベトナム政府は天然資源の「未加工状態での輸出」を抑制し、国内での高度加工を推奨しています。新法では、採掘後に適切な加工を経ていない天然資源の輸出に関する非課税規定をより厳格化し、実質的な課税、あるいは税率の適正化を行います。

1.4. 災害・疫病対策、国防用の輸入物資

緊急時に迅速な通関を行うため、従来は輸入段階でVAT非課税とされていた特定の物資について、新法では原則として一旦課税(または厳格な管理)とし、事後の財政メカニズムを通じて調整する方向へ転換します。これにより、免税措置を悪用した不正輸入を防止します。

2. 輸入貨物における課税価格算定基準の明確化

輸入時におけるVAT課税価格は、税関による事後調査(Post-clearance audit)において最も指摘を受けやすいポイントです。新法第7条では、輸入貨物の課税価格の構成要素が以下のように再定義・明確化されました。

輸入VAT課税価格=輸入税計算価格(CIF価格等)+輸入税+補足税+特別消費税+環境保護税

日系・外資系企業への留意点:

  • 補足税(Thuế bổ sung)の明記: 不当廉売された海外製品から国内生産を守るための「アンチダンピング税」や「セーフガード税」が、明確にVATの課税ベースに算入されます。

  • 税関リスク: 税関による事後調査で輸入税価格の否認(評価替え)が発生した場合、それに連動して輸入VATも自動的に追徴されるため、インボイス価格の妥当性(移転価格税制との整合性)の確保がより重要になります。

3. プロモーション(販売促進)、広告、贈答用物品・サービスの課税ルール

マーケティング活動に伴うサンプルの配布や、顧客への贈答品(お中元・お歳暮、周年記念品など)のVAT処理は、実務上非常にトラブルが多い領域です。

新法では、商取引法の規定に従って商工局または商工省に適正に登録・通知されていないプロモーション活動において、無償で提供された物品やサービスについては、「提供時における同種または類似の物品・サービスの市場価格」を課税価格としてVATを計算・申告しなければならないことが明文化されました。

実務上の重要リスク(Compliance Risk): マーケティング部門が商工局への届出を怠って顧客へ無料サンプルやプレゼントを配布した場合、税務調査時に「売上VATの未申告」とみなされ、追徴課税および遅延利息の対象となります。企業は、社内のマーケティング活動と法務・財務の連携体制を強化する必要があります。

4. 税率区分(0%、5%、10%)の包括的な再編

新法では、各税率が適用される品目の境界線が引き直されました。これは企業の価格戦略にダイレクトに影響します。

4.1. 免税かつ還付が受けられる「0%税率(輸出)」の条件厳格化

0%税率は、消費地課税原則に基づき輸出を促進するための優遇措置ですが、いわゆる「幽霊会社」を使った架空輸出による不当なVAT還付詐欺が多発したため、新法では対象が厳しく制限されます。

  • 国際輸送(航空、海運、陸上、鉄道)。

  • 免税店(Duty-free shops)での販売。

  • 出国手続きを完了した旅客への隔離エリア・保税地域での販売。

  • 輸出サービス(航空・海運会社に直接提供されるサービスなど)。

注意: 「輸出サービス」の定義について、新法では政府に対してより具体的な識別基準を策定する権限を与えています。「海外企業宛の請求」であっても、ベトナム国内で実質的に消費されるサービスについては0%が否認され、10%が適用されるリスクが高まります。

4.2. 「非課税」から「5%課税」への移行によるパラダイムシフト

前述の肥料、農業用機械などがこれに該当します。

  • 影響: 売上時には5%のVATが上乗せされますが、企業は原材料や生産設備にかかった仕入VAT(10%等)の控除が可能になります。これにより、結果として製造原価が下がり、エンドユーザーへの販売価格を安定させることができるという、マクロ経済的な好循環を狙っています。

4.3. 「5%」から標準税率「10%」への引き上げ品目

これまで優遇税率5%の対象だった一部の商業的性質の強い品目が、標準税率10%へ引き上げられます。

  • 未加工の林産物(商流における転売): 自ら栽培・採捕して販売する場合を除き、一般的な商業流通ステージでは10%が適用されます。

  • 砂糖およびその副産物: 従来の5%から10%へ。

  • 文化・スポーツ・展示会・芸術・映画活動: 商業的な展示会、娯楽イベント、映画の制作・配給などは、完全にビジネス化されたとみなされ、10%の対象となります。

5. 仕入VAT控除要件のさらなる厳格化

ベトナムの税務調査において、仕入VATの否認は最も頻繁に見られる指摘事項です。新法では、現金決済の制限と輸出書類の整備について厳しいメスが入りました。

5.1. 2,000万ドン未満の取引における現金決済監視の強化

現行法では、2,000万ドン(税込)未満の請求書(インボイス)については現金での支払いが認められており、仕入VAT控除および法人税(CIT)の損金算入が可能でした。

新法第14条第2項では、この「2,000万ドン未満」の取引であっても、現金決済を悪用した架空経費の計上やインボイスの細分化(分割発行)を防止するため、実態確認(納品書、検収書、契約書等の不備の有無)が非常に厳格に審査されます。企業においては、金額の大小にかかわらず、原則として「全取引の銀行振込化(Non-cash payment)」を社内規程(購買規程)で義務付けることを強く推奨します。

5.2. 輸出貨物・サービスにおける必須提出書類の追加

0%税率を適用し、仕入VATの控除・還付を受けるためには、従来の契約書や送金証明書に加え、以下の物流書類の保管・一致が法律上、明示的に義務付けられました(第14条第2項c点)。

  • パッキングリスト(Packing List): 実際の輸出数量、重量、規格の詳細。

  • 船荷証券/航空貨物運送状(Bill of Lading / Airway Bill): 貨物が実際にベトナム領土外、または保税地域へ退出したことの客観的証明。

  • 貨物保険書類(ある場合)。

これにより、通関システム(グリーンレーン)を悪用した「中身のない空コンテナの輸出」による還付詐欺を完全に遮断します。

6. VAT還付要件の緩和と是正(5%税率企業への救済)

今回の法改正において、特定の企業にとって非常に有利な「還付制度の復活・緩和」が含まれています。

控除しきれない仕入税額の累計による還付メカニズム

新法第15条において、5%の税率が適用される物品・サービスを製造・販売する企業で、12ヶ月連続または4四半期連続で控除しきれない仕入VATの累計残高があり、その金額が3,000万ドン以上に達している場合、税務当局に対してVATの還付申請を行う権利が与えられます。

企業へのメリット: 売上VATが5%であるのに対し、工場の電気代や設備投資、原材料の仕入VATが10%である場合、構造的に仕入税額が超過(デッドプール)し、企業のキャッシュフローを圧迫していました。この12ヶ月(または4四半期)での還付ルートが確立されたことにより、特に農業資材、クリーンエネルギー、特定の製造業分野に投資する企業の資金繰りが大幅に改善されます。

7. 重要変更点の比較要約表(新旧対照表)

経営陣やCFOが迅速に意思決定できるよう、主要な変更点を一覧表にまとめました。


8. 企業が今すぐ取るべき5つの戦略的アクション

2025年7月1日の施行に向けて、企業は「直前になって慌てる」ことがないよう、今から計画的に以下のガバナンス体制を構築する必要があります。

8.1. ERPシステムおよび会計ソフトのマスター改修

  • 自社が取り扱うすべての品目(原材料、仕入商品、販売製品、提供サービス)の税率マスタを見直してください。

  • 2025年7月1日を境に、システムが自動的に新税率(5%または10%)および新しいインボイスフォーマットへ切り替わるよう、IT部門やシステムベンダー(SAP、Oracle、MISA等)と事前の要件定義を進める必要があります。

8.2. プロモーション(販促活動)のワークフロー見直し

  • 営業・マーケティング部門が計画している「無料サンプル配布」「バウチャー提供」「顧客への贈答」について、商工局(Sở Công thương)への届出が必須となる基準を社内でマニュアル化してください。

  • 届出のない贈答については、会計上、時価での売上VAT計上(および自己負担)を行うための予算枠を設定する必要があります。

8.3. ロジスティクス書類(B/L, Packing List)のアーカイブ体制強化

  • 輸出取引(EPE:加工輸出企業への販売を含む)を行う企業は、税務調査時にいつでも「インボイスー税関申告書ーB/LーPacking Listー銀行送金証明書」の5点セットを紐づけて提示できるよう、電子アーカイブシステム、または紙ベースのファイリング規則を厳格化してください。

8.4. 価格転嫁および購買契約の再交渉

  • 自社の製品・サービスが5%から10%へ引き上げられる場合、売値(税込価格)を上げるのか、あるいは本体価格を下げて税込価格を据え置くのか、競合他社の動向を踏まえたシミュレーションを行ってください。

  • サプライヤーからの仕入税率が変わる場合、購買単価の交渉(仕入価格の引き下げ要求など)を施行の数ヶ月前から開始する必要があります。

8.5. 税務専門家によるアップデート情報の継続的ウォッチ

  • 本改正法に基づき、今後、詳細な実施規則を定めた「政府政令(Nghị định)」および「財務省通達(Thông tư)」が順次発表されます。法律の条文だけでは判断できない「輸出サービスの具体的な判定基準」などについては、ベトナムの税務実務に精通した外部の監査法人、顧問会計士、または大手の税務エージェントと密に連絡を取り、常に最新の公式見解を確認してください。

結論

ベトナム新VAT法(法律番号:48/2024/QH15)は、企業に対してより高度なコンプライアンス(法令遵守)財務の透明性を要求しています。

一見すると、要件の厳格化による事務負担の増加や税率引き上げによるコストアップといったマイナス面が目につくかもしれませんが、肥料や農業関連、還付制度の活用など、構造的な「コストの澱み」を解消できるチャンスでもあります。

2025年7月1日の施行まで、残された時間を活用し、社内の仕組みをいち早くアップデートした企業こそが、次のベトナム経済成長期における競争優位性を確保できるでしょう。経営者の皆様におかれましては、本税制改正を単なる法対応ではなく、「社内ガバナンスとサプライチェーンを最適化する戦略的機会」と捉え、リーダーシップを発揮されることを期待いたします。

本稿は、ベトナムの最新の税法解釈および一般的な会計アドバイザリーインサイトに基づいて作成されています。実務への適用にあたっては、個別具体的な取引スキームに応じた専門家へのご相談を推奨いたします。

この記事が、読者の皆様にとってベトナムの付加価値税改正点を理解する一助となれば幸いです。税法改正への対応は、企業のコンプライアンスにおいて非常に重要です。もし、より詳細な情報が必要な場合や、貴社の具体的な状況に合わせたご相談をご希望でしたら、どうぞAGS社までお気軽にお問い合わせください。
私たちの専門家チームが、貴社のスムーズな移行を全力でサポートいたします。
Nguồn: https://thuvienphapluat.vn/phap-luat/ho-tro-phap-luat/chinh-thuc-co-luat-thue-gia-tri-gia-tang-2024-so-482024qh15-diem-moi-luat-thue-gia-tri-gia-tang-202-191442.html

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